Vol. 001
影の旅人

Shadow traveler

「影の旅人の物語」


仕事に忙殺される日々

一日に僅かな時間しか私的時間は取れず

社会の中で私の存在は薄まっていき

私だけの"個"と向き合うことが困難な中で



自らの感性が少しずつ色褪せ
消えていくのを感じた私は
そんな色褪せを少しでも抑えるためだけに

自分の机上の一角に"聖域"と呼ばれる小さな場所をつくった。

よく分からないけれど私の心に光をくれる小さなものだけをその場所に集めて

夜になるとそこに10分程だけ座り、デスクライトの下で静かに佇んでいる

その時間が、自分が本当に自分でいられる時間でした。

目に見えない社会なるものに自分の世界が埋め尽くされて

いく中でその聖域が最後の砦のように立っていました

その頃の私は

なんとなく日中社会で生きている時を"光"の時間

そして夜の僅かな自分の時間を"影"の時間のように感じていて

影の時間に机の上を彷徨い歩いて

いつかの、どこかへあてもなく歩いている旅人の姿が

その頃の自分に寄り添ってくれる存在のように描かれていました

それが影の旅人でした

会社員の頃そんな人物像を描いていて

会社員を辞め創作活動を始めてからまもなく

影の旅人は立体作品として作られました。

今の私は有り難いことに

好きなこと、自分の感性を生かして生きることをさせてもらえる日々ですが

その頃も、現在も

社会で生きる人達の中にあの頃の自分と重なるような人はいる

あの頃の自分の感性を守ることが

同じような方たちの感性の役に立つ

私の制作活動の主軸もそのようなところにあり

そんな考えのアイコン的な作品の一つが影の旅人

だと思っています


心に光を感じられるときは

影を忘れずに知らせてくれる存在として

心に影があるときは

寄り添ってくれる存在として

Characters in this story
  • 影の旅人
    shadow traveler

  • 影の旅人
    shadow traveler

    VIEW MORE